2008年2月14日木曜日

『万葉集』のテキスト

新編古典全集
(写真=新編日本古典文学全集の『萬葉集』)

『万葉集』を学ぶためには、まず信頼できる本を、手元に置くことが大切です。

信頼できる本とは、『万葉集』の漢字本文が記されており、専門の研究者による本文校訂と訓読(読み下し)が行われ、その根拠も記されているものです。

その上、題詞や歌のことばなどについて、簡単な説明が付いているものが、使いやすいでしょう。

万葉集研究では、次の4冊本が、標準的なテキストとして、利用されています。

(1)小島憲之・木下正俊・東野治之校注『萬葉集』①~④、新編日本古典文学全集、小学館、1994~1996年

現代の、本文校訂・訓読の研究成果を、盛り込んだテキストです。全体に穏健な説が示されています。

『万葉集』は、約1200年前に成立した歌集です。それだけに、研究者の間で、本文・訓読・解釈について、説が分かれているところが、多々あります。そこで、(1)をベースにしながら、次のような本を、比較対照しながら、『万葉集』を読むことになります。

(2)佐竹昭広・山田英雄・工藤力男・大谷雅夫・山崎福之校注『萬葉集』一~四、新日本古典文学大系、岩波書店、1999~2003年
  〔漢籍・仏典などの典拠について詳細。平安時代の万葉享受にも言及〕

(3)稲岡耕二校注『萬葉集』(一)~(四)、和歌文学大系、明治書院、1997~2006年((四)未刊)
  〔口誦から記載へという文学史観に立ち、初期の歌を、「声」の歌として解釈。漢字に託された文学的意図についても詳細〕

(4)伊藤博校注『萬葉集釈注』一~十一、集英社、1995~1999年
  〔『萬葉集』の成立過程を、視野に入れながらの解釈。歌の配列を問題にする〕

(5)中西進校注『万葉集 全訳注原文付』(一)~(四)、講談社文庫、講談社、1978~1983年
  〔『万葉集』を「文学作品」として読むことにこだわり、思い切った訓読・解釈を提示〕

(6)伊藤博他校注『萬葉集全注』巻第一~巻第二十、有斐閣、1983~2006年(巻第十六未刊)
  〔現代の万葉集研究を導いてきた15人の研究者が、各巻ごとに分担執筆した注釈書〕

(2)~(6)は、気に入ったものは、手元に置き、その他は、図書館で利用してください。大きめの図書館でないと、所蔵されていないかもしれません(大学図書館には、必ず所蔵されていると思います。一般公開されている大学図書館を、利用することも、一つの方法です。


*『万葉集』に関する本を、書店でたくさん見かけます。その中に引用された本文や、ダイジェスト版で、歌を読むことで終わらずに、最新の成果を提示する、全歌約4500首を収めるテキストで、『万葉集』そのものを、是非味わってください。思いがけない歌に、出会うはずです。