2013年6月30日日曜日

「佐佐木信綱研究」創刊0號

佐佐木信綱研究0號1

新たな信綱研究の始まり
��「佐佐木信綱研究」創刊0號、編集兼発行人・佐佐木頼綱、発行所・佐佐木信綱研究会、A5判108頁、2013年6月3日刊、1,000円〈税込〉)

2013年6月に、佐佐木頼綱氏を編集兼発行人とする「佐佐木信綱研究」創刊0號(問題提起号)が、佐佐木信綱研究会から刊行されました。

佐佐木信綱研究会は2011年に発足した研究会です。佐佐木幸綱氏を始め、「心の花」会員を中心とする約30名で構成され、歌人にして万葉学者・古典学者であった佐佐木信綱の膨大で多面的な創作・研究業績、また信綱と関わる人々のネットワークについての研究を進めています。

佐佐木信綱研究会は、佐佐木幸綱氏の「巻頭言」によれば、信綱没後「半世紀の時間が経って、佐佐木信綱を客観的に研究し、論じる時期がやってきた」という問題意識のもと、信綱の後輩・弟子であった人々によるこれまでの信綱研究に対して、「まったく自由な立場で、また、信綱が生きた時代とはちがう時代の発想と価値観によって、信綱研究の新しい切口を見つけてゆく」ことをめざしています。

研究会の会員それぞれが現在進めている信綱研究について、問題関心の在りかを、熱く語り、その成果の一端を示したのが、創刊0號(問題提起号)です。信綱の戦争観、信綱の英訳萬葉集、バジル・ホール・チェンバレンらとの交友、軍歌・新体詩・校歌の制作など、興味の尽きないテーマが挙げられています。「心の花」に発表されながら、歌集に収録されなかった歌を、信綱自身の書入とともに紹介する貴重な報告も掲載されています。

私も2011年9月の第8回研究会で、信綱の万葉集研究について、お話しする機会を賜りました縁で、小論を寄稿しました。万葉集研究を支える、信綱の強靭な〈私〉、それでありながらやわらかな〈私〉、について論じました。「ゆるぎない〈私〉」を無条件に信じることのできない今日において、新たな研究主体を築いてゆく手懸りが、信綱の「やわらかな〈私〉」にあると思います。

「佐佐木信綱研究」誌は、今後1年に2号刊行予定とのことです(6月、12月)。多彩で、熱気に満ちた「佐佐木信綱研究」誌は、歌壇はもちろん、日本語・日本文学研究にも新たな風を吹き込むに相違ありません。その創刊に、心より敬意と祝意を表したいと思います。

【目次】
巻頭言(佐佐木幸綱)
研究会の歩み
 佐佐木信綱研究会の活動紹介(高山邦夫)
 佐佐木信綱研究会の発足(山本陽子)
特別評論
 佐佐木信綱と西行(平田英夫)
 ゆるぎない〈私〉、やわらかな〈私〉
  ―佐佐木信綱博士の萬葉学における研究主体―(小川靖彦)
 *信綱写真館(昭和12年)
人物信綱
 佐佐木信綱と明治(大野道夫)
 佐佐木信綱像の再構築(盛田帝子)
 日向の御船出 書簡にみる信綱(大口玲子)
 妻・雪子が記す信綱(田中薫)
 佐佐木信綱と英訳万葉集(今泉摩美)
 *信綱写真館(明治41年、昭和13年、昭和14年)
交友関係
 ようござんす(今野寿美)
 持続する志を(渡英子)
 和歌革新運動と信綱~旧派、新派の人物群像(高山邦男)
 王堂チェンバレンと佐佐木信綱(河野千絵)
 心友 中野逍遙(山本陽子)
 佐佐木信綱と北海道、アイヌ(屋良健一郎)
 *信綱写真館(昭和13年)
作品信綱
 『新月』私考メモ(三枝昻之)
 信綱の飲食の歌~信綱の酒の歌~(田中拓也)
 「水師営の会見」に関する一考察(武藤義哉)
 社会への眼差し―青年信綱の新体詩をめぐって―(松岡秀明)
 「心の花」創刊以前の信綱評(中西由起子)
 「心の花」創刊号の信綱の歌(鈴木陽美)
 『思草』と数詞―「語彙」「初出」を試用する(藤島秀憲)
 棚ぼた『思草』研究(経塚朋子)
 国語教材の中の信綱(大津貴寛)
 未知の水脈としての佐佐木信綱(川野里子)
 愛する信綱の三冊(奥田亡羊)
 信綱作詞の校歌について(間宮清夫)
 信綱は何を残そうとしたのか(佐佐木頼綱)
   *          *
 『思草』講読会便り(藤島秀憲)
筆者紹介・編集後記
表紙画・向井潤吉(佐佐木信綱記念館所蔵) 装丁・高山ケンタ

              佐佐木信綱研究0號2

【次号予告】第一号 特集『思草』
特集1 『思草』語彙 付録『思草』初版550首(藤島秀憲・経塚朋子・鈴木陽美)
特集2 『思草』初出異同一覧
特集3 アンケートわたしが好きな『思草』の一首
昇仙峡レポート(佐佐木頼綱)
平成25年(2013)12月3日刊行予定(定価1000円〈税込〉)

【購読連絡先】
佐佐木信綱研究会(e-mail: nobuken0708[at]gmail.com)
Amazon.co.jpにても注文できます。電子版はシナノブックドットコムにてダウンロード販売しています。

【補記】
第8回研究会で私がお話しした内容の前半は、1の論文に拠り、後半は2の論文にまとめました。

1.小川靖彦「「文献」から「書物」へ―佐佐木信綱・小松茂美の萬葉集研究と新たな本文(ほんもん)学への道」『国文学 解釈と鑑賞』第76巻5号、2011年5月
2.小川靖彦「願はくはわれ春風に身をなして―佐佐木信綱の萬葉学における「評釈」〔『萬葉集選釈』と『新月』〕―」『青山学院大学文学部紀要』第54号、2013年3月