2012年8月4日土曜日

講演会「世界の文字史と『万葉集』」のお知らせ

「文字」とは何か―『万葉集』を通じて

世界の文字史と万葉集

来る2012年8月10日(金)に、青山学院大学文学部日本文学科主催の講演会「世界の文字史と『万葉集』」が開催されます。

  講演会「世界の文字史と万葉集」
  講師:コロンビア大学准教授 デイヴィッド・ルーリー氏(Prof. David B. Lurie)
     〔使用言語・日本語〕
  日時:2012年8月10日(金) 14:00~16:00(受付13:30~)
     14:00~15:00講演 15:15~15:25コメンテイターによるコメント
     15:25~16:00質疑応答
  場所:アイビーホール(青学会館) グローリー館4階 クリノン
    〒150-0002 東京都渋谷区渋谷4-4-25
    アイビーホールアクセス
  参加費無料・事前申込不要

私はこのブログの2008年2月の記事「万葉集の文字法(1)」に次のように記しました。


日本語の場合を含めた、文字と「ことば」の関係一般については、現在、デイヴィッド・ルーリー氏(コロンビア大学)が、世界の文字を視野に収めた、スリリングな研究を進めています。一日も早く、氏の研究が論文化されることを願っています。

2011年、ルーリー氏はその研究成果を大著 Realms of Literacy: Early Japan and the History of Writing にまとめられました。この講演会「世界の文字史と『万葉集』」では、その研究成果の一部が、日本語で披露されます。

ルーリー氏はその著書の第7章(Japan and the History of Writing)で、「表語(logography)」と「表音(phonography)」を多様に組み合わせた、『万葉集』を始めとする古代日本の書記システムの研究を通じて、アルファベットを文明の象徴とする西洋的な文字史観を批判しています。さらに文字がそのまま「ことば」を写すものでなく、「ことば」から独立して機能するものであることを、世界の文字史によって明らかにしています。

漢字の歴史、中国周辺の日本・朝鮮半島・ヴェトナムにおける漢字と自国語との関係、さらに西アジアの文字なども幅広く視野に収めたルーリー氏の理論的な研究は、“文字とは何か”、を私たちに改めて考えさせるものです。

また、ルーリー氏の研究は、万葉集研究が世界の文字研究に大きく貢献するものであることを具体的に示しています。それは、今後の万葉集研究、さらに日本古典文学研究の新たな可能性を力強く提示するものと言えます。

講演会「世界の文字史と『万葉集』」では、この第7章を基礎に、発見が相継ぐ歌木簡についてのルーリー氏の見解も示されます。

私たち青山学院大学文学部日本文学科は、この講演会を日米の万葉集研究の成果を共有し、また世界の文字・文学研究に寄与する機会としたいと思っております。多数の皆様のご来場をお待ちしております。


*デイヴィッド・ルーリー氏(Prof. David Barnett Lurie)
コロンビア大学東アジア言語文化学部准教授、ドナルド・キーン日本文化センター所長
ハーバード大学卒業(比較文学専攻)、コロンビア大学大学院(日本古典文学専攻)にて博士号(Ph.D)取得(2001年)。東京大学に留学(1998~2001年)。(エドウィン・クランストン氏、ドナルド・キーン氏、ハルオ・シラネ氏の教え子)
研究テーマ: 書記(writing)とリテラシーの歴史、古代日本のリテラシー・知・文化の歴史、日本にける「読む(reading)」システムの発展と中国の書記(writing)の受容、日本における辞書と百科事典の歴史、日本中世・近世における古典注釈、日本近世の金石学・考古学、言語思想、比較神話学
著書: Realms of Literacy: Early Japan and the History of Writing. Cambridge (Massachusetts) and London: The Harvard University Asia Center, 2011
論文: 「神話学として見る津田左右吉の『上代史』に関するノート」(『没後50年津田左右吉展図録』早稲田大学・美濃加茂市民ミュージアム編集・発行、2011年)、「万葉集の文字表現を可能にする条件(覚書)」(『国語と国文学』第84巻第11号(特集・上代文学研究の展望)、2007年11月)、その他、英語・日本語の論文多数。

【謝辞】多くの方々にご来場いただき、会場は満席となりました。御礼申し上げます。ルーリー氏のお話は、文字史についての広い知識をもとに、日本の複雑な書記(writing system)に新しい光を当てると同時に『万葉集』の書記を通じて、世界の文字史を再構築するという野心的なものでした。この講演会の内容は、小冊子にまとめられる予定です。小冊子が完成しましたら、このブログなどで報告いたします。