2009年10月21日水曜日

「万葉集」展(早稲田大学日本古典籍研究所・早稲田大学図書館)

「享(う)け継がれる思い」

早稲田展示

先の記事「万葉集1250年の展覧会」で紹介した、「「万葉集」1250年展」(仮称)の詳細がわかりましたので、改めてお知らせします。

柘枝切(つみのえぎれ)を始め、主に早稲田大学図書館の所蔵する、貴重な『万葉集』の写本、万葉学書が出展されています。また、早稲田大学の万葉学の結晶した、窪田空穂の注釈書『万葉集評釈』の原稿も展示されています。『万葉集評釈』は、万葉集歌の心と言葉の本質を、みずみずしく捉えた、必読の注釈書です。

ポスター左上のユーモラスな絵は、洋画家・書家の中村不折(1866~1943)が描いた、「牛飼の左千夫(*歌人の伊藤左千夫)万葉集を繙(ひもと)くの図」です。

 「〈万葉集1250年記念〉万葉集~享け継がれるその思い~」
 会期:2009年10月16日(金)~11月17日(火)
 *日曜・祝日、10月21日(水)・22日(木)は閉室。ただし10月18日(日)は開室。
 時間:10時~18時(10月18日は17時まで)
 会場:早稲田大学総合学術情報センター2階展示室
 主催:早稲田大学日本古典籍研究所
     早稲田大学図書館

〈記念講演会〉
 「古筆切から見た万葉集の伝本研究」
   講演者:田中大士氏(文部科学省)
   入場無料・予約不要
   日時:2009年10月31日(土) 14時~15時30分
   会場:早稲田大学大隈小講堂
   主催:早稲田大学日本古典籍研究所(問合せ先も同じ)
【展示資料一覧】
��*「個人蔵」などの注記のあるもの以外は、全て早稲田大学図書館蔵)

『万葉集』の写本と版本
��1]万葉集断簡  鎌倉時代後期写  〔*柘枝切〕
��2]万葉集  寛永20年(1643)刊  〔*寛永版本〕
��3]万葉集  江戸時代後期写
��4]万葉集  宝永6年(1709)刊  〔*宝永版本〕

『万葉集』と同時代の文献・筆跡
��5]古事記  江戸時代末期写 (飯田武郷写)
��6]日本書紀  江戸時代中期刊 (稲葉通邦・通故校合書入)
��7]肥前国風土記  明治3年(1890)写  個人蔵
��8]続日本紀  明暦3年(1657)刊 (村尾元融手沢本)
��9]百万塔  奈良時代
��10]大宅朝臣賀是万呂奴婢見来帳  天平勝宝元年(749)書  重要文化財
   【原本の展示は10月29日~10月31日、11月13日~14日】
��11]経疏切(『大般涅槃経集解』巻第56断簡)  奈良時代写  個人蔵

『万葉集』に影響を与えた漢籍
��12]文選正文  天明4年(1784)刊  (坪内逍遥旧蔵)
��13]玉篇 巻第9  8世紀写  国宝
  【原本の展示は10月29日~10月31日、11月13日~14日】
��14]藝文類聚  16世紀後半刊
��15]初学記  万暦15年(1587)刊
��16]初唐四傑集  同治12年(1873)刊
��17]敦煌経切(『大般若経』巻第27断簡)  8世紀写  個人蔵

中古・中世の『万葉集』享受と注釈
��18]古今和歌集  正中元年(1324)写か
��19]倭名類聚鈔  寛文7年(1667)刊  (狩谷棭斎書入本)
��20]拾遺和歌集  文明16年(1484)写  (甘露寺親長写)
��21]拾遺和歌集切  14世紀前半写  個人蔵
��22]古今和歌六帖  江戸時代中期写  個人蔵
��23]古今和歌六帖  寛文9年(1669)刊  (伴高渓書入本)
��24]新古今和歌集  江戸時代中期写
��25]柿本人麿像  江戸時代後期写
��26]万葉集註釈  安政5年(1858)写
��27]万葉集目安  天和4年(1684)刊  個人蔵
��28]万葉集抜書  江戸時代中期写  三條西家旧蔵
��29]和歌注釈断簡  江戸時代中期
��30]柿本人麻呂伝記  江戸時代後期写

近世の国学者による『万葉集』研究
��31]万葉代匠記 巻1-20  江戸時代後期写
��32]万葉集類林  江戸時代後期写
��33]万葉考 1-4  明和5年(1768)刊
��34]万葉考巻十六稿本断簡  江戸時代中期書  (賀茂真淵自筆)
��35]本朝水滸伝  明和10年(1773)刊
��36]見処女墓作歌  江戸時代後期写  (荒木田久老自筆)
��37]万葉抄  江戸時代後期写  服部文庫蔵
��38]万葉拾言抄  文政10年(1827)写
��39]万葉集語彙  江戸時代後期写
��40]勢城日記  文政5年(1822)頃写
��41]万葉集略解  安政3年(1856)刊
��42]百氏百人一首  安政4年(1857)写

近代における『万葉集』〈再発見〉
��43]横文字百人一首  明治6年(1873)
��44]万葉集短歌私考  明治38年(1905)  (伊藤左千夫自筆原稿)
��45]牛飼の左千夫万葉集を繙くの図  明治時代  (中村不折画)
��46]短評  明治33年(1900)  (長塚節筆)
��47]恋十首・万葉ニナラフ  明治33年(1900)  (長塚節筆)
��48]万葉集感断片  大正15年(1926)  (斎藤茂吉筆)
��49]斎藤茂吉著『柿本人麿』  1934・1940頃写  (土屋文明筆)
��50]『万葉集評釈』原稿  ~昭和22年(1947)  (窪田空穂筆)


*なお、展示期間中、早稲田大学會津八一記念博物館で、元暦校本万葉集断簡(巻10・2134)が展示されます。元暦校本万葉集巻第10の筆については、書家で書道史研究者の飯島春敬氏は、"細い勁直(けいちょく)な線で漢字の技法などに特に癖がある”と評しています。数多くの書き手からなる、元暦校本のさまざな書風を、実際に目にする良い機会です

*詳細な情報をお伝えくださった早稲田大学教授・松寿夫氏(日本古典籍研究所所長)に、心より御礼申し上げます。この展示は松氏が企画されたものです。