2009年9月18日金曜日

『NHK日めくり万葉集』vol.10(講談社MOOK)

日めくり万葉集10

誌上展覧会への招待
��藤原茂樹・坂本信幸監修『NHK日めくり万葉集』vol.10(講談社MOOK)、講談社、B5判96頁、2009年9月刊、690円〈税込〉)

2009年9月17日(木)に『NHK日めくり万葉集』vol.10が発売となりました。

この号では、「万葉集古写本を味わう」という特集を組んでいます。特集は次のような構成です。

 〈カラー〉 平安時代に極めた美
 〈記 事〉 「装丁、料紙、書」の魅力と鑑賞の手引き
   (*カラーページの編集・解説と記事の執筆を担当させていただきました)

巻頭の5ページからなるカラーページでは、平安時代に調度品として制作された、『万葉集』の4種類の古写本、桂本(かつらぼん)、藍紙本(あいがみぼん)、元暦校本(げんりゃくこうほん)、金沢本(かなざわぼん)の見どころを紹介しました。

桂本や金沢本の「書物」としての姿の写真や、桂本の下絵の鳥や虫の拡大写真を収めるなどの工夫もしてみました(鳥が虫をついばもうとするところを描いた、緊張感のある中にもユーモアを漂わせる絵は必見です)。金沢本を開いたときの状態がわかる貴重な写真もあります。

古写本の所蔵機関のご協力と講談社編集部のご尽力により、さながら誌上展覧会のようなページに仕上がっています。平安時代の『万葉集』の古写本の美を堪能していただければ幸いです。

また記事の方では、『万葉集』の古写本の味わい方を具体的に解説しました。展覧会で『万葉集』の古写本を観覧すると、“美しい”と感動します。その感動をさらに深めるための見方を、私の経験を踏まえて紹介しました。

特に、『万葉集』の古写本を「書物」として、つまり、『万葉集』の中身とも深く関わる、装丁・料紙・書からなる総合芸術として味わうことにこだわりました。

見方を知ると、『万葉集』の古写本が、今までの何倍も面白くなるはずです。

桂本と金沢本は、御即位20年記念特別展「皇室の名宝-日本美の華-」(東京国立博物館)の2期(11月12日(木)~29日(日))に出展されます。実物の迫力を経験するまたとない機会です。この「手引き」を参考に、新しい魅力を発見してください。


日めくり万葉集10巻頭

【御礼】
*掲載されている図版は、宮内庁侍従職、宮内庁三の丸尚蔵館、東京国立博物館、京都国立博物館、MOA美術館からお借りしました。桂本の巻姿については、集英社から図版をお借りしました(複製本を撮影した写真も使っていますが、その旨を明記しています)。ご厚情に心より御礼申し上げます。
【お詫び】
��85ページの図2については、手違いにより、記事のレイアウトのために仮に用いた桂本の複製の写真がそのまま印刷されてしまいました。桂本の所蔵機関である宮内庁に、謹んでお詫び申し上げます。また読者の皆様にも誤った写真をお見せすることになり、申し訳ございません。ご海容のほど、心よりお願い申し上げます。

〔お知らせ〕 2009年10月21日現在、出版社の講談社では、この『NHK日めくり万葉集』Vol.10は、在庫切れとなっています(講談社BOOK倶楽部のウェブサイトによる)。
【追記】
��カラーの3ページ下の藍紙本の解説にて、先行文献に基づき、「巻一・九・十・十八の断簡がある」と記しましたが、その後、調べ直しましたところ、巻一の断簡の所在情報については、不確実なものであることがわかりました。この一文を、「巻九・十・十八の断簡がある」とさせていただきたく存じます。(2009年11月8日)