2007年12月31日月曜日
村永清(仙覚万葉の会会長)企画・編『おがわまち万葉の歌めぐり』
万葉集と小川町への思いの結晶
��村永清企画・編『おがわまち万葉の歌めぐり』NPO法人仙覚万葉の会、88頁、2006年2月刊)
鎌倉時代の学僧・仙覚(せんがく)が、最初の本格的な万葉集注釈書を完成させた、埼玉県小川町の地で、『万葉集』に関する、新しい本が誕生しました。
68首の万葉秀歌に、簡潔な解説を加え、写真も添えた、手のひらサイズの美しい本です。写真は、全て小川町に関わるものです。
奈良の都から、はるかに遠い関東の風土の写真であるのに、1枚1枚の写真を見ていると、『万葉集』の世界が、心の中に広がってきます。
それは、1冊全体を貫く、『万葉集』への深い思いと、小川町への強い愛情が可能にした、奇跡と言えます。本書は、NPO法人仙覚万葉の会の、村永清さん、中谷功さんが先頭に立って、小川町の皆さんが、自分たちの力でまとめ上げたものです。
今、本書に取り上げられた68首の万葉秀歌を記した、「万葉モニュメント」(歌碑)が、、小川町のメイン・ストリートなどに建てられています。読者は、本書をポケットに入れて、緑と水の美しい、和紙の里・小川を訪れたくなるに違いありません。
私も、本書冒頭に、仙覚の和歌11首を紹介しました。理知と情緒が一体になって、独特の、冴え渡る世界を作り上げた仙覚の歌も、是非味わってみてください。
昆陽の池の 葦間の水に 影冴えて 氷を添ふる 冬の夜の月
(こやのいけの あしまのみづに かげさえて こほりをそふる ふゆのよのつき)
〔訳〕昆陽の池の、葦の繁みの間々の水に、澄んだ白い光が映って、あたかも氷をそこに添えたかのように見せている冬の夜の月よ(昆陽の池は、摂津国の歌枕。今の兵庫県伊丹市の南部から尼崎市の北部にかけての一帯にあった池。奈良時代の僧・行基が造ったとも言われる)。
【目 次】
一 はじめに
二 仙覚万葉の里と散策のみち
三 万葉の時代区分と著名歌人
四 仙覚律師の和歌
五 万葉モニュメント
六 万葉モニュメントの選歌基準と選歌の経緯
七 おわりに
*本書は、流通経路に乗らない本でしたが、2007年で既に在庫切れとなっています。国立国会図書館、埼玉県立図書館、小川町立図書館で見ることができます。青山学院大学の私の研究室にも、置いてあります。
*村永さん、中谷さんのもとに、再版を切望する声がたくさん届いています。