敦煌の竹
(写真=スーザン・ウィットーフィールド博士の著書から。右が幡)先の記事「竹の文化と巻物」で、竹の生育しない敦煌で発見された巻物に、竹の発装が、しばしば見えることを紹介しました。
多数の貴重な写本が発見された、敦煌・莫高窟の第17窟からは、写本の発装以外にも、加工された竹が、いくつか見つかっています。
それらは、現在、ロンドンのヴィクトリア・アンド・アルバート博物館に保管されています。その中には、博物館番号 LOAN:STEIN.481:1to3 の3本のように(Museum Number のボックスに LOAN:STEIN.481:1 と入力してください)、細く(最も長いもので、幅6㎜)、薄いものもあります。
(*ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館の画像では、これらの厚さはわかりませんが、実際に調べてみたところ、敦煌写本の発装の厚さに近いことがわかりました。)
これらは、その長さ・幅から、巻物の発装ではないと思われます。あるいは、幡(ばん。旗)のような、仏教儀礼で用いられる用具の、一部であった可能性があります。
巻物に限らず、仏教文化に関わる、さまざまな要具を通じて、中国南方の竹の文化が、北方の砂漠地帯の敦煌に伝わっていたことが窺えます。
敦煌写本の巻物自体を詳しく研究することにあわせて、第17窟の遺物全体を見据えながら、巻物の装丁の、材料の供給源や技術など研究することも、今後重要な課題となるに相違ありません。