2008年3月22日土曜日
謙慎書道会展70回記念「日中書法の伝承」展(急告)
必見の展示
先の記事「謙慎書道会展70回記念「日中書法の伝承」展(予告)」で紹介しました、「日中書法の伝承」展が、いよいよ明日3月22日(土)で閉幕となります。
実際に観覧し、文字史を学ぶためにも、また日本の書の展示会としても、必見のものと思いました。是非、足をお運びください。
受付は、4階となります。4階は、中国の文字資料と、書の展示となります。甲骨・青銅器・石に刻された文字、木簡に記された文字を、同じフロアで見ることで、いかに文字というものが、その素材と密接な関係にあるかと、実感することができます。
特に、普段は、拓本でしか見ることのない、青銅器に刻された文字の、力強さには、本当に感銘を受けました。
・[38][39]小克鼎(しょうこくてい)の文字に注目。
また、4階では、敦煌文書も興味深いものでした。写経の文字が、どのように装飾性を帯びてゆくか、という歴史を、垣間見ることができます。なお、「書物」という点では、小巻子本である『正法華経』巻第17が、大変面白いものです。私的な巻物の、実物を見ることができる、数少ない機会です。なお、縦の寸法が、12.9㎝と、冊子本に多く見られる、縦の寸法と同じことも、目を引きます。
・[67]敦煌文書
��階は、まず篆刻です。4階を見た目で、篆刻を見ると、今までと全く違って見えてきます。青銅器や石に文字を刻むような意味を、篆刻が持っていたことが、感じられます。
そして、いよいよ日本の書作品となります。
日本の代表的な書が、一同に会しています。圧巻は、特別室の三色紙です。「継色紙」「寸松庵色紙」「升色紙」が、並んで展示されています。そして、それぞれの書風で、小さな空間に、ドラマを作り上げていることに、深い感銘を受けます。それぞれの、文字の配置、そして、写真では再現できない、墨の濃淡と肥痩を、熟覧してください。
・[101]寸松庵色紙
・[106]升色紙
・[118]継色紙 (*上句と下句が別の料紙に書かれています。下句の、濃淡と肥痩による立体性を目にし、それによる抒情性を感じていると、下句が「心は妹に寄りにけるかも」ではなく、「心は君に寄りにしものを」でなくてはならない、と思われてきます。)
意外な発見は、素紙に書かれた関戸本古今和歌集切の、文字の美しさです。関戸本は、料紙の美しさに、目を奪われがちですが、素紙の書にこそ、その真髄が現れているように思いました。
・[98]関戸本古今和歌集切
また枯れた筆の美しさが言われがちな、良寛の対幅は、実物を見ると、実に生き生きとした、力強いものでした。特に、墨継ぎをしたところに、力強さが現れています。枯れているように見える文字の底にある生命力に、驚かされました。
・[138]草書五言詩軸
会場は、静かで落ち着いた雰囲気です。観覧の後、たくさんの文字から、清々しい力をもらったような気持ちになります。
*図録は、4,000円です。約350頁の大部なものです。観覧後購入して、会場の椅子に座って、図録の写真を見た上で、再度気になる作品を見るとよいでしょう。