2011年2月22日火曜日

1年後の2012年4月から青山学院大学日本文学科が変わります

青山学院の紅梅
青山学院の紅梅(2011年2月)

(【追記・お知らせ】青山学院大学文学部の青山キャンパスへの統合と、日本文学科の新カリキュラムの実施は、東日本大震災の影響により、2013年4月に延期されました。「青山学院大学日本文学科新カリキュラムの実施の延期」をご参照ください)

2012年4月に、青山学院大学文学部のキャンパスは、青山キャンパスに統合されます。

現在、青山学院大学文学部では、1・2年次は相模原キャンパスで、3・4年次は青山キャンパスで学ぶ体制となっていますが、2012年4月からは、1年次から4年次まで全て青山キャンパスで学ぶことになります。

これに伴って、2012年4月から、日本文学科のカリキュラムも新しく生まれ変わります。日本語に関する授業が充実したものとなります。また、文学分野における国際的な交流を学ぶ科目や、現代の表象文化を探究する科目が開設されます。

文学分野における国際的な交流を学ぶ新しい科目では、日本文学を世界の文学の中で学び、日本文学研究を通じて世界の文学研究に貢献することをめざします。また、日本文学を海外に伝える力を身につけます。

具体的には、日本文学研究のための英語、日本文学とアメリカ・ヨーロッパ、アジアとの関係、日本文学の翻訳などを学ぶ授業の開設が予定されています。

日本文学を海外からの目で見つめ直すとともに、海外に向けて日本文学を発信してゆきたいという、意欲あふれる皆さんをお待ちしています。

関連記事:「これからの日本文学研究


2011年2月6日日曜日

『万葉集 隠された歴史のメッセージ』の書評

昨年刊行しました私の『万葉集 隠された歴史のメッセージ』(角川選書、2010年7月刊)について、奥村和美氏(奈良女子大学准教授、日本古代文学)の書評が『青山学報』第234号(2010年12月刊)に掲載されました。

奥村氏の書評は、この本の特徴を、最新の研究状況の中で捉えてくださっています。さらにこの本を踏まえて、”伝承されてきた歌を漢字の文字列に当てはめることも、訓読と注解の萌芽と位置づけられる”という、新たな問題提起をされています。
『青山学報』第234号
*目次の私の本のタイトルをクリックすると、PDFファイルが開きます。

刊行後、多くの方々から、励ましのことばを賜りました。面識のない方にも、ブログにも取り上げていただきました。心より御礼申し上げます。

今後も、『万葉集』という貴重な文化遺産のすばらしさを伝えてゆきたいと思っています。


*しばらく、このブログ「万葉集と古代の巻物」は休止状態となっています。昨年一年の間に、小松茂美先生のご逝去などがあり、なかなか記事を書けませんでした。徐々に記事を書いてゆきたく思っています。

2010年8月31日火曜日

お知らせ(『万葉集 隠された歴史のメッセージ』について)

このたび、私の新刊『万葉集 隠された歴史のメッセージ』が、2010年8月29日(日)付の『毎日新聞』の「今週の本棚」で紹介されました。

記事は、『毎日新聞』のウェブ・サイトにもアップされています。
今週の本棚・本と人:『万葉集 隠された歴史のメッセージ』
この記事につきまして、お知らせがあります。

・「雄略は『皇女を母に』生まれている」は、正確には「雄略は『皇族を母に』生まれている」です。
 (雄略天皇の母・忍坂大中姫は、応神天皇の皇孫です。)

・「代々皇女を母としてきた軽皇子(文武天皇)」は、正確には「皇女を母とする軽皇子(文武天皇)」です。
 (天智天皇・天武天皇の母・斉明天皇も、敏達天皇の曾孫で皇族です。)

詳しくは、『万葉集 隠された歴史のメッセージ』を、お読みいただければ幸いです。


2010年7月29日木曜日

安田靫彦画伯「飛鳥の春の額田王」

額田王
命の輝き

このたび上梓しました私の本『万葉集 隠された歴史のメッセージ』(角川選書、角川学芸出版、2010年7月刊)の表紙には、日本画家・安田靫彦画伯(やすだ・ゆきひこ 1884~1978年)の「飛鳥の春の額田王」(滋賀県立近代美術館蔵)を使わせていただきました。

「飛鳥の春の額田王」は、安田画伯の代表作で、多くの本に取り上げられています。中学生や高校生のための『国語便覧』などにも写真が載せられています。

それだけに既視感を強く持ってしまっていたこともあり、私は写真の絵が感じさせる、やや平面的な印象に飽きたらないものも感じていました。むしろ、安田画伯の歴史画では、最初期の「遣唐使」(1900年、16歳)の力強い筆線に心惹かれていました。

ところが、この印象が全く浅いものに過ぎなかったことを覚りました。2009年春に、千葉市美術館にて開催された「大和(やまと)し美(うるは)し 川端康成と安田靫彦」展で、私は「飛鳥の春の額田王」を初めて目にしました。息を呑みました。

縦131.1、横80.2㎝の大きな紙面の放つ豊かな力に、まず驚かされました。そして、額田王の生き生きとした表情に感動を覚えずには居られませんでした。赤みの差した頬はふっくらと感じられ、しかも清潔な美しさを湛えていました。

『万葉集』の人々は、

  あからひく 色(いろ)ぐはし児(こ)(赤く照り輝く美しいあなた)   〔巻11・1999〕

のように女性の美しさを赤い色で表現しました。

赤は命の輝きを示す色でした。大海人皇子(天武天皇)が、額田王を

  (むらさき)のにほへる妹(いも)(紫のように美しく色映えるあなた)   〔巻1・21〕

と言ったのも、「紫」が赤系統の色と考えられていたからです。大海人皇子は、赤の輝きに加えて、「紫」の高貴さも具えた最高の女性として、額田王を褒め称えたのです。

安田画伯の「飛鳥の春の額田王」は、この額田王の命の輝きと凛とした美しさを鮮やかに表現した作品であったのです。この作品が制作されたのは、1964年、画伯80歳の時です。画伯の命の若々しさと円熟とが、この額田王の姿を生み出したのでしょう。そして、この作品には、額田王への、安田画伯の温かな眼差しがあります。

私の本の表紙を決めるに当たり、編集部から「飛鳥の春の額田王」を強く薦められました。私は『万葉集』の入門書に最もふさわしい絵の一つと思いながらも、躊躇しました。写真では、この作品の命の輝きが失われてしまうことを恐れたからです。

しかし、編集部のご努力によって、作品の命を感じさせる写真に仕上げていただきました。そして今、この作品を使わせていただいたことを、心から感謝しています。

額田王の歌の底には、生きることへの肯定的姿勢があります。それは、『万葉集』全体に通じるものです。安田画伯の「飛鳥の春の額田王」は、そのような『万葉集』の世界へ、私たちを力強く、温かく導いてくれるようです。

「飛鳥の春の額田王」を再び目にする日を、心待ちにしています。

[主な参考文献]
��.『安田靫彦』新潮日本美術文庫34、新潮社、1998
��.財団法人奈良県万葉文化振興財団編『開館一周年記念特別展 図録 歴史画のゆくえ-近代日本絵画の名品でたどる万葉の世界-』奈良県立万葉文化館、2002
��.『大和し美し 川端康成と安田靫彦』求龍堂、2008


2010年7月17日土曜日

小川靖彦『万葉集 隠された歴史のメッセージ』

万葉集(選書)

万葉集とは何か
��小川靖彦『万葉集 隠された歴史のメッセージ』角川選書、角川学芸出版、四六判296頁、2010年7月刊、1600円〈本体〉)

このたび、私の新しい本『万葉集 隠された歴史のメッセージ』が、角川学芸出版から角川選書の1冊として刊行されました。発売予定日は7月23日(金)でしたが、21日(水)から書店、インターネットで販売が始まっています(書店では、選書の棚に置かれています)。

この本は、“万葉集とは何か”について考えた万葉集入門書です。『万葉集』という「書物」を全体として捉えて、その魅力と歴史的意義を示すことをめざしました。

書名は、『万葉集』という「書物」が何のために製作されたのかを考察した、第一章に基づいています。『万葉集』を巻子本(巻物)として、連続的に読むと、『日本書紀』とは異なる〈歴史〉が見えてきます。

表紙は日本画家の安田靫彦画伯の「飛鳥の春の額田王」(滋賀県立近代美術館蔵)です。

この本が『万葉集』への水先案内となれば幸いです。
【目 次】
はじめに

第一章 『万葉集』という「書物」-「やまと歌」による〈歴史〉の創造
     【第一章のための基礎知識】
一 「書物」としての『万葉集』
二 皇統の《始祖》-一番歌・雄略御製
     【コラム1・一番歌はいつ作られたか】
三 満ち足りた実りの国-二番歌・舒明御製
四 歴史上の舒明天皇
     【コラム2・不思議な標目】
五 天皇による統治の完成への歩み
六 藤原宮の主・文武天皇
     【コラム3・皇位継承の次第を示す配列】
七 巻子本であった『万葉集』
八 成長する「書物」・『万葉集』
     【コラム4・音読から黙読へ】

第二章 万葉歌人たちの詩の技法
     【第二章のための基礎知識】
 一 額田王の〈媚態(コケットリー)〉
 二 柿本人麻呂の想像力
 三 山上憶良の悟り得ぬ心
 四 大伴家持の孤独
 五 作者未詳歌の輝き

第三章 漢字に託す心-漢字で書かれた「やまと歌」
     【第三章のための基礎知識】
 一 巻一の書記法-記憶に支えられた大胆な表記
 二 『万葉集』の《文字法》
 三 漢字から「かな」へ

第四章 万葉集古写本の世界
     【第四章のための基礎知識】

引用文献一覧/学びの導き手
おわりに


角川書店のホームページ
【訂正】誤植がありましたことを、お詫び申し上げます。
                    (誤)             (正)
46頁9行               ことば選んだ        ことばを選んだ
118頁17行             九世紀半ばまでの     十世紀半ばまでの
142頁2行「石見」の振り仮名  いわみ            いはみ
 

2009年10月21日水曜日

「万葉集」展(早稲田大学日本古典籍研究所・早稲田大学図書館)

「享(う)け継がれる思い」

早稲田展示

先の記事「万葉集1250年の展覧会」で紹介した、「「万葉集」1250年展」(仮称)の詳細がわかりましたので、改めてお知らせします。

柘枝切(つみのえぎれ)を始め、主に早稲田大学図書館の所蔵する、貴重な『万葉集』の写本、万葉学書が出展されています。また、早稲田大学の万葉学の結晶した、窪田空穂の注釈書『万葉集評釈』の原稿も展示されています。『万葉集評釈』は、万葉集歌の心と言葉の本質を、みずみずしく捉えた、必読の注釈書です。

ポスター左上のユーモラスな絵は、洋画家・書家の中村不折(1866~1943)が描いた、「牛飼の左千夫(*歌人の伊藤左千夫)万葉集を繙(ひもと)くの図」です。

 「〈万葉集1250年記念〉万葉集~享け継がれるその思い~」
 会期:2009年10月16日(金)~11月17日(火)
 *日曜・祝日、10月21日(水)・22日(木)は閉室。ただし10月18日(日)は開室。
 時間:10時~18時(10月18日は17時まで)
 会場:早稲田大学総合学術情報センター2階展示室
 主催:早稲田大学日本古典籍研究所
     早稲田大学図書館

〈記念講演会〉
 「古筆切から見た万葉集の伝本研究」
   講演者:田中大士氏(文部科学省)
   入場無料・予約不要
   日時:2009年10月31日(土) 14時~15時30分
   会場:早稲田大学大隈小講堂
   主催:早稲田大学日本古典籍研究所(問合せ先も同じ)
【展示資料一覧】
��*「個人蔵」などの注記のあるもの以外は、全て早稲田大学図書館蔵)

『万葉集』の写本と版本
��1]万葉集断簡  鎌倉時代後期写  〔*柘枝切〕
��2]万葉集  寛永20年(1643)刊  〔*寛永版本〕
��3]万葉集  江戸時代後期写
��4]万葉集  宝永6年(1709)刊  〔*宝永版本〕

『万葉集』と同時代の文献・筆跡
��5]古事記  江戸時代末期写 (飯田武郷写)
��6]日本書紀  江戸時代中期刊 (稲葉通邦・通故校合書入)
��7]肥前国風土記  明治3年(1890)写  個人蔵
��8]続日本紀  明暦3年(1657)刊 (村尾元融手沢本)
��9]百万塔  奈良時代
��10]大宅朝臣賀是万呂奴婢見来帳  天平勝宝元年(749)書  重要文化財
   【原本の展示は10月29日~10月31日、11月13日~14日】
��11]経疏切(『大般涅槃経集解』巻第56断簡)  奈良時代写  個人蔵

『万葉集』に影響を与えた漢籍
��12]文選正文  天明4年(1784)刊  (坪内逍遥旧蔵)
��13]玉篇 巻第9  8世紀写  国宝
  【原本の展示は10月29日~10月31日、11月13日~14日】
��14]藝文類聚  16世紀後半刊
��15]初学記  万暦15年(1587)刊
��16]初唐四傑集  同治12年(1873)刊
��17]敦煌経切(『大般若経』巻第27断簡)  8世紀写  個人蔵

中古・中世の『万葉集』享受と注釈
��18]古今和歌集  正中元年(1324)写か
��19]倭名類聚鈔  寛文7年(1667)刊  (狩谷棭斎書入本)
��20]拾遺和歌集  文明16年(1484)写  (甘露寺親長写)
��21]拾遺和歌集切  14世紀前半写  個人蔵
��22]古今和歌六帖  江戸時代中期写  個人蔵
��23]古今和歌六帖  寛文9年(1669)刊  (伴高渓書入本)
��24]新古今和歌集  江戸時代中期写
��25]柿本人麿像  江戸時代後期写
��26]万葉集註釈  安政5年(1858)写
��27]万葉集目安  天和4年(1684)刊  個人蔵
��28]万葉集抜書  江戸時代中期写  三條西家旧蔵
��29]和歌注釈断簡  江戸時代中期
��30]柿本人麻呂伝記  江戸時代後期写

近世の国学者による『万葉集』研究
��31]万葉代匠記 巻1-20  江戸時代後期写
��32]万葉集類林  江戸時代後期写
��33]万葉考 1-4  明和5年(1768)刊
��34]万葉考巻十六稿本断簡  江戸時代中期書  (賀茂真淵自筆)
��35]本朝水滸伝  明和10年(1773)刊
��36]見処女墓作歌  江戸時代後期写  (荒木田久老自筆)
��37]万葉抄  江戸時代後期写  服部文庫蔵
��38]万葉拾言抄  文政10年(1827)写
��39]万葉集語彙  江戸時代後期写
��40]勢城日記  文政5年(1822)頃写
��41]万葉集略解  安政3年(1856)刊
��42]百氏百人一首  安政4年(1857)写

近代における『万葉集』〈再発見〉
��43]横文字百人一首  明治6年(1873)
��44]万葉集短歌私考  明治38年(1905)  (伊藤左千夫自筆原稿)
��45]牛飼の左千夫万葉集を繙くの図  明治時代  (中村不折画)
��46]短評  明治33年(1900)  (長塚節筆)
��47]恋十首・万葉ニナラフ  明治33年(1900)  (長塚節筆)
��48]万葉集感断片  大正15年(1926)  (斎藤茂吉筆)
��49]斎藤茂吉著『柿本人麿』  1934・1940頃写  (土屋文明筆)
��50]『万葉集評釈』原稿  ~昭和22年(1947)  (窪田空穂筆)


*なお、展示期間中、早稲田大学會津八一記念博物館で、元暦校本万葉集断簡(巻10・2134)が展示されます。元暦校本万葉集巻第10の筆については、書家で書道史研究者の飯島春敬氏は、"細い勁直(けいちょく)な線で漢字の技法などに特に癖がある”と評しています。数多くの書き手からなる、元暦校本のさまざな書風を、実際に目にする良い機会です

*詳細な情報をお伝えくださった早稲田大学教授・松寿夫氏(日本古典籍研究所所長)に、心より御礼申し上げます。この展示は松氏が企画されたものです。

2009年10月20日火曜日

展示情報(2009年10月~12月)

2009年秋の万葉集の展示

先の記事「万葉集1250年の展覧会」で、今秋の展覧会を紹介しました。その後、新たに得た、『万葉集』に関わる展示情報を紹介します。

○特別展「皇室の名宝-日本美の華」
東京国立博物館 2期 2009年11月12日(木)~11月29日(日) 会期中無休
桂本万葉集〔平安中期、源兼行筆。現存最古の万葉集古写本〕  御物
金沢本万葉集〔平安後期、藤原定信筆〕 宮内庁三の丸尚蔵館蔵

��『NHK日めくり万葉集』vol.10で、これらの写本の美しさと見方・味わい方を紹介させていただきました。

「美(うるわ)しの和紙-天平の昔から未来へ-」
東京・サントリー美術館 2009年9月19日(土)~11月3日(火・祝) 火曜日休館
・桂本万葉集巻第四断簡(栂尾切) 滋賀・MIHO美術館蔵 (10月7日~10月19日)
・元暦校本万葉集断簡 滋賀・MIHO美術館蔵(9月19日~10月5日)

��残念ながら、『万葉集』に関わる展示を終わっています。
��天平写経や平安写経が数多く出品されています。
��10月21日から11月3日までの期間には、
高野切古今集第二種断簡(源兼行筆)〔東京・五島美術館蔵〕
和漢朗詠集巻下断簡(藤原定信筆)〔京都国立博物館蔵〕
などが展示されます。

○企画展「冷泉家 王朝の和歌守(うたもり)展」(冷泉家時雨亭叢書完結記念、朝日新聞創刊130周年記念)
東京・東京都美術館 2009年10月24日(土)~12月20日(日)
毎週月曜日休室(月曜日が祝日の場合は開室、翌日休室)

��和歌に関わる貴重な典籍が、数多く出品されています。
��冷泉家時雨亭文庫には、金沢本万葉集巻第18、万葉集抄(最古の万葉集注釈書)、万時(藤原俊成の、万葉集成立に関する論考)、万葉集註釈巻第1・巻第3(仙覚著)、楢葉(ならのは。肖柏の万葉抄出書)などの、万葉集に関わる貴重な写本があります(「冷泉家時雨亭叢書」第39巻所収)。
��これらが今回の企画展で展示されるかどうかについての情報は、まだ得ていません。