2008年9月1日月曜日
展覧会の図録についての提案
観覧用の展示図録を
博物館や美術館で作品や文化遺産を見る時、重要なガイドとなるのが、展示図録です。以前の記事「展覧会のための必備アイテム」で、展示図録を観覧前に購入して、その写真と実物を比較しながら、気づいたことを、書き込むとよい、と書きました。
ところが、2004年頃から、展示図録が、国立の博物館を中心に、質量ともに充実したものとなり、手に持って観覧することが、難しくなってきています。
カラーの図版も豊富になり、しかも拡大写真なども多く含まれています。観覧後、自宅に帰って、今日見た作品を、もう一度じっくりと味わい、また文化遺産を、自分なりに研究するためには、大変有益な書物と言えます。
また最新の研究成果を記した、研究者の論文も収録されています。展示図録は、専門書や学術雑誌と並んで、最先端の研究成果が示された、必読の文献ともなっています。
しかし、その分、大きさは、A4判変形(縦30cm、横22.5センチメートル前後)が多くなり、ボリュームも400ページ前後となり、重さも、1.7㎏から2.0㎏近くにまでなっています。
このような図録を、展覧会場で持ち歩くことは、容易ではありません。持ち帰るのにも、一苦労です。とはいえ、展示図録ほど、その展覧会に出品された作品や文化遺産に即した資料はありません。
そこで、現在の詳細な展示図録に併せて、観覧用の薄手の図録(ないしパンフレット)を製作することを、博物館・美術館で展示図録の製作に関わる方々に、ご提案したく思います。
主な展示品のカラー写真と、展示品すべてについての簡単な解説を、薄手の1冊にまとめていただけると幸いです。
*写真は、新たに撮りなおす必要はありませんし、解説については、詳細な展示図録の「作品解説」や「釈文」などを別刷りして、1冊にまとめることもできるかと思います。
私が、展覧会で最も使いやすいと感じたのは、上の写真の右に挙げた、正倉院展の図録です。大きさはA4判、ボリュームは130ページほど、重さは0.6㎏弱です。手に持つには、0.8㎏程度が限度のようです。
展覧会では、列品一覧表も配られていますが、多くは簡単なものです。この列品一覧表と、詳細な展示図録の中間に位置するような図録があれば、書き込みをするのにも好都合ですし、書き込みをしないにしても、観覧者の、展示品に対する理解も一層深まるに相違ありません。
価格も低めに設定したならば、この薄手の図録が、さまざまな年齢層の観覧者の手にわたることになると思います。
なお、上の写真の左は、2005年・2006年に開催された、「没後30年高島野十郎展」の図録です。A4判(縦29.7cm、横210cm)に比べると、縦がやや短く(28.4cm)、横がやや長く(21.5cm)なっています。168ページで、0.8㎏ほどです。多くの場合、展示図録の表紙は、厚紙1枚でできていますが、この高島野十郎展の図録の表紙は、やや厚手の芯紙に、紙を貼ったものとなっています。
この展示図録は、画集のような印象を与えます。私の心に強く残る「書物」の一つとなりました。こうした工夫も、このような規模であるからこそ、可能なのでしょう。
博物館・美術館それぞれのセンスで装丁された、多彩な展示図録を想像すると、楽しくなります。