2009年7月17日金曜日
「文字でたどる江戸の旅」展(青梅市郷土博物館)
江戸時代後期の文字と日記の文化
青梅市を散策した折に、興味深い展示会に出会いました。青梅市郷土博物館で行われている企画展「文字でたどる江戸の旅」です。
久保仙助、柳屋(小林)たみ、小嶋小三郎の道中日記が、翻刻と現代語訳を伴った写真版で展示されています(仙助の道中日記は、一部実物も展示されています)。
特に私の目を引いたのは、柳屋(小林)たみの道中日記です。商家出身の女性で、徳川斉荘(とくがわなりたか。尾張徳川家12代当主)にも仕えたたみの、嘉永2年(1849)4月27日から8月10日までの129日間におよぶ旅の記録です。
たみの旅は、日本橋から長野善光寺、京都・大阪、四国の琴平神社にも足を延ばし、伊勢神宮・名古屋〈主君の墓参〉を経て品川に戻る大旅行でした。記録は大福帳のような帳面に書かれています。
たみの道中日記は、旅先での体験やさまざまな人々との出会いを生き生きと記しています。柏餅などがおいしかったことを楽しそうに書いている記事などには、つい微笑してしまいます。
江戸時代後期の、旅の実際を伝える貴重な内容に加えて、その筆の美しさが目を惹きます。堂々とした、しかも柔らかな文字です。漢字もきちんとした崩し方で書いています。
商家の女性が、これほどまでに整った文字で、道中の出来事を丹念に書き記していることに、江戸後期の文字文化の高さを、改めて実感させられました。
加えてその文字に、この道中日記が、単に、その場かぎりの、自分ひとりのための覚書ではないという印象も受けました。他の人々や、後の人も見る「記録」として、この道中日記を綴っている、という意識が働いているように感じました。
青梅市郷土博物館は、青梅への愛情が強く感じられる博物館です。青梅の自然や産業についての展示から新たな知識が得られます。柿渋(かきしぶ。渋柿の実のタンニンから作る茶色の染料)を作る道具を初めて目にしました。
また、第二次世界大戦中に作られた年賀状など、当時の人々の生活や意識を伝える、興味深い資料もあります。近接した場所に保存されている重要文化財・旧宮崎家住宅とともに(古い農家独特の、囲炉裏の火による煤のにおいが懐かしく感じられました)、青梅に行く機会がある時には、必ず訪ねたい博物館です。
企画展「文字でたどる江戸の旅」
会場:青梅市郷土博物館
〒198-0053 東京都青梅市駒木町1-684
会期:2009年2月21日(土)~8月16日(日)
開館時間:9時から17時
休館日:月曜日(祝日の場合は翌日)
入場料:無料
ホームページ:http://www.city.ome.tokyo.jp/index.cfm/43,1351,160,193,html
チラシ