2011年9月28日水曜日
『萬葉語文研究 第7集』
『万葉集』の基礎研究の新たな展開
��萬葉語文研究会編『萬葉語文研究 第7集』、和泉書院、A4判192頁、2011年9月刊、3300円〈本体〉)
萬葉語文研究会が編集する『萬葉語文研究』の第7集が刊行されました。萬葉語文研究会は、2000年(平成12)に、『万葉集』をはじめ上代文献の語学文学研究会として発足しました。その前身である萬葉有志研究会は、井手至氏(大阪市立大学名誉教授)の発案をもとに、若手研究者が、互いに切磋琢磨する場として、1991年(平成3)に誕生しました
この度刊行された第7集は、巻頭に井手至氏のインタビューを掲げています。このインタビューからは、『万葉集』の厳密な本文批判と訓釈を成し遂げ、また萬葉学会を創設された澤瀉久孝(おもだか・ひさたか)氏(京都大学名誉教授)のお人柄と、澤瀉氏の周りに集った人々の姿が、生き生きと浮かび上がってきます。
続いて、様々な年齢層の研究者による、『万葉集』などに関する基礎的研究の成果が報告されています。訓読・伝本・作品解釈などの地道な研究から、新たな視界が開けてくることが強く感じられる1冊となっています。
私も、「継色紙」と藤原定信筆「金沢本万葉集」を中心に、古写本の本文を、書との関わりで捉え直すことを試みました(美しく書かれた「誤写」の意味するものを考えみました)。
*なお、私の論文と田中大士氏の論文は、2010年度奈良女子大学古代学学術
研究センター「若手研究者 研究支援プログラム(「萬葉集原本への道」)」
での特別講義に基づくものです。
以下に、目次を紹介します。
萬葉学会の草創期を振り返る
―井手 至先生をかこんで―(聴手・毛利正守、坂本信幸、内田賢徳)
「鳥翔成」考(山口佳紀)
万葉集〈片仮名訓本〉の意義(田中大士)
「書物」としての萬葉集古写本
―新しい本文研究に向けて(「継色紙」・金沢本萬葉集を通じて)―(小川靖彦)
山上憶良「貧窮問答歌」について(廣川晶輝)
筑前国風土記逸文(怡土郡)にみる地名起源説話の特徴
―仲哀天皇紀との比較から―(大館真晴)
人麻呂長歌の分節(瀧口翠)
《書評》八木孝昌著『解析的方法による万葉歌の研究』
��「萬」「万」は、固有名詞や論文タイトルについては、原表記に従いました。
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