2017年11月10日金曜日

「古代書物史」の試み

藏中しのぶ氏編『古代の文化圏のネットワーク』刊行


2017年11月10日、竹林舎より、シリーズ「古代文学と隣接諸学」第2巻の、藏中しのぶ氏編『古代の文化圏のネットワーク』が刊行されました。

中央アジア・唐・朝鮮半島との交流を広く視野見渡しながら、古代の日本文学・文化を考察した、今までにない論文集です。


私も、「日本古代書物史序章」という論文を寄稿しました。

(A5判、560頁、竹林舎刊)

日本古代の〈書物〉文化については、従来、日本文学研究の基礎学としての書誌学、また、仏教学、写経研究、日本史学、古文書学、美術史学、古筆学などがそれぞれに研究が進められてきました。この論文では、中国文化圏の動向を視野に入れつつ、漢訳仏典・漢籍・「国書」(日本で撰述された書物)を、〈書物〉の物質性という視点からトータルに捉えることをめざしました。

「序章」と銘打ったように、この論文では、5~7世紀までの、日本古代の〈書物〉文化の始発を歴史的に記述することを試みました。

【「日本古代書物史序章」目次】
一 〈書物〉という視点
二 「ふみ」という語
三 〈書物〉の伝来
四 推古朝の“書物”の問題
五 「一切経」の読誦と経典の講読
六 経典に護られた国家
七 日本古代の〈書物〉文化
主要日本古代書物一覧(年表)

文書も〈書物〉も、一体の「ふみ」として捉えていた日本人が、激動する東アジアの政治状況の中で、政治性を強く持ち、宗教的呪術的な「兵器」とさえ言えるような役割をも担うものとして、〈書物〉を自覚していった過程を辿りました。

大英図書館蔵スタイン・コレクションの敦煌写本の調査を進めながら、この論文を執筆しました。敦煌写本の手触りに即しながら、中国文化圏の〈書物〉の役割について考察しました。

分野を超えた議論の場を提供することができれば幸いです。

《お詫び》
海外で執筆し、私の不手際で、校正回数が少なかったため、誤植が多々あります。お許しください。
531頁12行 『摩訶般若波羅蜜多経』 → 『摩訶般若波羅蜜経』
532頁01行  同 上
533頁09行 六世紀前半の日本で、 → 七世紀前半の日本で、
534頁01行 六世紀前半段階で、 → 七世紀前半段階で、
「主要日本古代書物(年表)」
*ゴシックにしなければならない書名が、そのままになっているものがあります。