2012年9月20日木曜日

NHK文化センター講座「写本で味わう『萬葉集』」のお知らせ

王朝ブックデザインへの招待

写本で味わう萬葉集


この秋、2012年10月より、NHK文化センター青山教室にて、講座「写本で味わう『萬葉集』―王朝ブックデザインの美―」を、下記の要領で開催することになりましたので、お知らせします。

  秋の短期講座「写本で味わう『萬葉集』―王朝ブックデザインの美―」
  講 師:小川靖彦
  日 時:
   第1回 2012年10月6日(土) 15:30~17:00 桂本萬葉集―絵と色と書の交響―
   第2回 2012年10月27日(土)15:30~17:00 藍紙本萬葉集―祈りの書物―
   第3回 2012年11月10日(土)15:30~17:00 金沢本萬葉集―唐紙と躍動する書―
  会 場:NHK文化センター青山教室
   〒107-8601 東京都港区南青山1-1-1新青山ビル西館4階
   電話03-3475-1151
   東京メトロ銀座線・半蔵門線、都営大江戸線「青山一丁目」駅直結
  受講料:会員9,450円、一般11,340円(消費税込)
   (電話で予約ができます)

日本最古の歌集『萬葉集』は、平安時代に美しい写本に仕立てられました。細部まで心の配られた装丁、繊細な色に染められた料紙(金銀で草花や鳥が描かれたり、優美な文様が刷られたりしました)、そして書の名手による漢字と「かな」の交響―。

平安時代の萬葉集古写本は美の粋を極めたものです。そのブックデザインは、世界の書物の文化の中でも誇れるものです。しかもその美は、『萬葉集』の歌の内容とも深く関わっています。

このブログでも、平安時代の萬葉集古写本の美を紹介してきましたが、講座では、最新の研究成果を踏まえながら、画像や複製を用いて、その鑑賞法や楽しみ方を具体的に解説します。

伝統的でありながら斬新で現代的な王朝ブックデザインの感性と美意識は、今日のブックデザインの制作にとっても大きなヒントとなるに相違ありません。

また書かれている『萬葉集』の歌の内容を知って、装丁・料紙・書を見つめ直すと、それらの深い意匠に驚きを覚えます。平安の能書たちが、どのように歌を味読し、これに姿を与えようとしたかを、丁寧に見つめてゆきます。

そして、写本の美に注目する時、『萬葉集』の歌は今まで以上の魅力を見せてくれます。歌に込められた心を味わい、「歌」とは何か、をご一緒に考えたいと思っています。

『萬葉集』に関心のある方にも、ブックデザインに関わっていらっしゃる方にも、平安時代の料紙装飾に興味のある方にも、古筆をさらに深く味わいたい方にも、是非ご参加いただきたいと願っております。もちろん日本の文化や美、世界の文学や書物に関心のある方ならば、どなたも大歓迎です。

第1回 桂本(かつらぼん)萬葉集(平安中期・11世紀半ば、源兼行筆)
―絵と色と書の交響―
『萬葉集』の現存最古の写本。巻子本。
色変わりの染紙に金銀で草花や鳥を描く。次々と変化してゆく書の姿は音楽的。恋歌の心を生き生きと写し出す。

第2回 藍紙本(あいがみぼん)萬葉集(平安後期・11世紀後半、藤原伊房筆)
―祈りの書物―
『萬葉集』の二番目に古い写本。巻子本。
銀を散らした薄藍色の染紙に濃墨で力強く書く。新時代の息吹と祈りの心を示す。旅の思いを豊かに造形する。

第3回 金沢本(かなざわぼん)萬葉集(平安後期・12世紀前半、藤原定信筆)
―唐紙(からかみ)と躍動する書―
小型の冊子本。唐草(からくさ)・亀甲文(きっこうもん)・水波文(すいはもん)などを刷り出した色変わりの唐紙に、速度感のある書で躍動する空間を作る。揺れる恋心に大胆に姿を与える。

写本で味わう萬葉集2
��尾長鳥と虫は桂本萬葉集の下絵を模写したものです)
10月6日(土)に無事第1回の講座が終わりました。熱心な受講者に恵まれ、心より感謝申し上げます。第2回からでも参加可能です。また、第2回・第3回のうちの1回のみのご参加も歓迎します。
私自身も王朝のブックデザインの、「統一の中の大胆な変化」に改めて驚きを覚えています。現代のブックデザインに関わる若い方々にも、伝統文化の斬新さを是非知ってもらいたいと願っています。
王朝のブックデザインを、いつの日か、海外の人々にも紹介したいと思いました。


3回の講座が終わりました。学ぶ意欲に満ちた受講者の皆様と、NHK文化センターのスタッフの皆様に、心より御礼申し上げます。