2011年4月6日水曜日

柚木裕司写真展「千年の古筆 学究の人、小松茂美」(お知らせ)

美を探究し続けた生の姿

2010年5月21日にご逝去された、古筆学者・小松茂美先生の写真展が開催されます。写真家の柚木裕司氏は、3年にわたって、小松先生のポートレート(肖像写真)を撮影されてきました。

  柚木裕司写真展「千年の古筆 学究の人、小松茂美」
  会期:2011年4月21日(木)~27日(水)
  時間:10:00~18:00【最終日14:00】
  会場:ポートレートギャラリー   〒160-0004 東京都新宿区四谷1-7 日本写真会館5階
   (JR「四ツ谷」駅四ツ谷口から徒歩3分、地下鉄丸ノ内線1番出口徒歩5分)

1945年8月6日、小松茂美先生は、広島に投下された原子爆弾(ウラン核爆弾)の爆心地から1.7キロメートルのところで被爆しました。かろうじて命をとりとめた先生は、国鉄職員として、負傷者の救出に奔走しました。しかし、翌日から高熱に襲われ(放射線の被曝によります)、入院。医師に死を宣告されました。

約1か月後、先生は病院を抜け出して自宅に戻りました。そして、先生の身体は奇跡的に回復してゆきました。その病床で、先生は、平清盛ら平家一門が奉納した、美しい経巻「平家納経」の存在を、新聞で知りました。

・・・非常に興味を覚え、“早く元気になって、是非、自分も平家納経を見てみたいものだ”と思ったのである。いまだかつて聞いたこともない「平家納経」という言葉が、奇妙な魅力をもって、私の気持ちを浮きうきとさせたのを、忘れることができない。 (『平家納経の世界』)

死の不安の中で知った〈美〉への強烈な憧れは、「古筆学」という新しい学問を生み出すことになりました。そして、「平家納経」を始めとする王朝文化の〈美〉を、持てる力の全てを尽くして探究し続けた小松先生の生きざまそのものも、まさに〈美〉と言えます。

晩年の小松先生の力強さと温かさを鮮やかに捉えた柚木氏のポートレートは、私たちに生きる力を与えてくれるに相違ありません。